一ッ星家のウルトラ婆さん

「一ッ星家のウルトラ婆さん」(ひとつぼしけ - ばあ)は、ナック・読売テレビ制作のアニメ。1982年10月16日から1983年1月15日まで、日本テレビ系列とそのクロスネット局で放送された。全13話(26話[1])。

概要編集

原作者は1980年代初頭に小学館の少女漫画誌で活躍していた芥川めめ氏[2]。ナック作品では1971年に放送された「いじわるばあさん(読売テレビ版)」に次ぐ老女を主人公とした作品である。

だが、ウルトラ婆さんが放映された土曜19時台の裏番組が(当時)圧倒的な視聴率を誇っていた「まんが日本昔ばなし」であった事もあり、わずか1クールで打ち切りとなってしまった。

因みに日本テレビ系における1982年10月開始のアニメとしては本作の他に「ときめきトゥナイト」・「忍者マン一平」があり、日テレでは本作を含めた3作品を「ゲキゲキアニメ」として売り出していたのだが[3]、「ときめきトゥナイト」は1年[4](しかも巨人戦中継で飛ぶ事が多く実際の放映回数は34回)、「忍者マン一平」は本作と同じく1クールで終了しており、3作品全てが短命に終わるという悲惨な結果となってしまった。

ストーリー概要編集

徳川家康の末裔であり、江戸時代から続く隠密の家系を統合する「ウルトラ会」の総元締の顔を持つバイタリティ溢れる明治生まれの老女・一ッ星トラが引き起こす珍騒動の数々を描いたギャグアニメ。

だが、その内容は肖像権を無視した芸能人いじりにテレビ番組・昔話のパロディ、更に「ダメおやじ」の再来とも言える差別発言の多い不謹慎なギャグや下ネタのオンパレードであり、現在では(ゴールデンタイムである)19時台はおろか地上波での放送が難しい内容の回も存在している。本作を視聴した一部のチャーケニストからはチャー研を超えた問題作」との声もある。

尤も、「正統派ヒーロー路線」を目指していた筈が、度重なる不幸な偶然が重なった結果後年怪作扱いとなってしまったチャー研とは違い、ウルトラ婆さんは制作当時の時点で意図的に「過激な表現を用いたギャグでお茶の間に衝撃を与える」目論見があったようである。

だが、放送から数十年を経て世間の価値観や倫理観が変化した事により、当時の時点で際どい内容であったギャグ表現は(風化とは別の意味で)笑えない内容に変容している。それ故に(当時のスタッフの意欲に反して)本作が殆どの視聴者の目に触れずにひっそりと終了したのは不幸中の幸いとしか言い様がないのであるだがその他一切の事は分かりません!

アニメの王国」シリーズからはDVDが2巻発売されているが、収録されているのは(各巻2話(4話)ずつの為)4話(8話)までである[5]

現時点(2023年)ではYouTube公式チャンネルでの配信はされておらず、かつてはJ:COMオンデマンドのキッズステーションHDにて配信されていたが、現在は終了となっている。

上記の通り現在は全話を通しての視聴が難しい状況ではあるが、2022年5月~6月に新宿シネマカリテにて開催された「新宿東口映画祭2022」では同時期のナック作品である「サイボット ロボッチ」と共にウルトラ婆さんの1話~3話が上映され、続く「新宿東口映画祭2023」では4話~6話が上映された。 そして劇場公開を記念して40年振りの新規グッズが発売された気でも狂ったんじゃないのか!?

スタッフ・音楽編集

本作のキャラクターデザインを務めたのは「元祖天才バカボン」・「ルパン三世(第2シリーズ)」・「シティーハンター」等に参加した北原健雄氏である。ギャグアニメらしいデフォルメの効いたデザインでありながら、北原氏特有の色気のあるミリキ的な女性キャラクターは本作でも健在である。

主人公であるトラ役を演じた松金よね子氏の唄うオープニング・エンディングテーマの作詞は「笑っていいとも!」や「オレたちひょうきん族」等の構成作家であった高平哲郎氏、作曲は当時アイドル的人気を誇っていた俳優・ミュージシャンの沢田研二氏、編曲は数多くのヒット曲を手掛けたベーシストの後藤次利氏という豪華トリオが手掛けている。

また、劇中の音楽は「タイムボカンシリーズ」や「まんが猿飛佐助」のオープニングの作曲等を手掛けた山本正之氏が担当しており、ここでも「楽曲は一流のナック」の法則が発動している。

「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」等で活躍している堀口忠彦氏による実写合成やクレイアニメ等を用いた前衛的なタイトルアニメーションは、「龍に乗った少年の後ろに現れたトラがその立場を奪い取る」という裏番組である「まんが日本昔ばなし」を意識したシーンが使われており、「ギャグアニメとして本作を成功させる」という意気込みが伝わってくる物であったが、程無くして件のシーンは差し替えられている。

漫画版編集

上記の通りアニメ本編では過激な描写が目立つ本作であるが、驚くべき事に放送当時は小学館の少女漫画誌である「週刊少女コミック」・「月刊ちゃお」や学年誌である「小学四年生」に漫画版が連載されていた。3誌の掲載紙の内、少女コミック版・ちゃお版は(原作者である)芥川めめ氏、小学四年生版は斉藤栄一氏が執筆している。

関連項目編集

  • まんが水戸黄門-1981年~82年に東京12チャンネル(テレビ東京)にて放送されたナック作品。主人公である水戸黄門(徳川光圀)は徳川家康の孫でトラの祖先にあたるが、作品の関連性はない。

外部リンク編集

脚注編集

  1. 放送当時はAパート・Bバートに加えてアバンタイトル・次回予告前のミニドラマも各1話とした上での「1回4話放送」を売りとしていた。
  2. 一部では「複数スタッフの共同ペンネーム」とされているが、芥川氏自身はウルトラ婆さんの開始前である1980年頃に漫画家デビューをしている。
  3. 本作以外の2作品はナック制作ではない。
  4. ただし、少女漫画誌りぼんで連載された池野恋氏による原作漫画は10年以上に渡り連載が続き、続編・スピンオフ作品が作られる程のヒット作品となっている。
  5. アニメの王国 DVDリスト